稲垣一樹行政書士事務所

群馬県高崎市の行政書士・住宅ローン専門ファイナンシャルプランナー


遺産分割協議についてよくある質問

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誰かが亡くなった瞬間にその人の相続が発生します。相続が発生した時から被相続人(亡くなった方)の財産は、その方の相続人が複数名いる場合は一旦相続人の共有財産となります。この共有状態になった財産を誰に、どのように割り振るかを遺産分割といいます。そしてその分割について相続人同士で話し合いをすることを遺産分割協議といいます。今回は遺産分割協議についてよく聞かれる質問をまとめてみました。

Q1.遺産分割協議は必ずしなければいけないのか

A1. 相続が発生した場合必ず遺産分割協議をしなければならないわけではありません。以下のケースの場合は遺産分割協議は不要です。

1.相続人が一人しかいない。
  これは当然ですね。相続人が一人の場合は協議はできません

2.財産がない
  これも当然です。財産がないのに協議する意味はないです。

3.遺言がある
  被相続人が遺言を残している場合は基本的には遺言に従って割り振りを決めることになります。

Q2.遺産分割協議は全員が同席でする必要があるか
A1.必ずしも全員が同席する必要はありません。いわゆる持ち回り方式で遺産分割協議を行い、相続人それぞれが遺産分割協議書に署名捺印をしたとしても有効です。しかしながら、判例(仙台高判平成4年4月20日)によると、「分割の内容が確定しており、そのことが各相続人に提示されることが必要である。」とのことです。遺産分割協議書に分割の内容が明確に示されていれば問題ありません。
相続人が多い場合や、遠方の相続人がいる場合は一堂に会して行うというのは中々難しいと思います。また各相続人に持ち回りだと時間がかかってしまうケースもあるので、各相続人に同じ内容の遺産分割協議書を送付し、それに署名捺印をもらうことも有効です。

Q3.遺産分割協議書の作成は必須か
A3.必ず作成しなければいけないことはありません。例えば相続財産が預貯金のみの場合は、多くの金融機関では遺産分割協議書は「あれば提出してもらう」程度で、必須とはなっていません。実務的には相続人代表者の口座に一括で入金して、後は相続人間で分配してくださいという感じが多いのではないでしょうか。また不動産の相続登記(名義変更)する際は協議書が必要になるケースが多いですが、こちらは法定相続分に従って分割する際は不要です。しかしながら、不要となるケースにおいても後々のトラブルを避ける為に作成することをお勧めします。

Q4.遺産分割に期限はあるのか
A 4.遺産分割に期限はありません。しかし、面倒だからしばらく放置するというのは色々と問題があります。相続手続きには期限が決められていることがあります。以下は特に注意を要する点です。

1.相続放棄
被相続人の財産において借金が多いときに選択されることが多い相続放棄には相続を知ってから3か月という期限があります。

2.相続税申告
相続税申告の必要がある場合は、被相続人が亡くなったことを知った翌日から10か月以内に申告、納税を行う必要があります。遺産分割が決まっていない状態で、暫定的に法定相続分で申告することも可能ですが、その際は小規模宅地の特例や配偶者控除の特例などの減税措置を適用できなくなります。「3年以内の分割見込み書」を提出することにより後日協議がまとまった後に特例による控除の還付を受けることはできますが、申告の手間が増えることや、相続税申告時の納税額が増えるなどのデメリットがあります。

3.相続登記
今年から不動産の相続登記が義務化され、こちらについては相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内の登記が義務化されています。ちなみに3年以内に遺産分割協議がまとまらない場合は、「相続人申告登記制度」を使うことにより、義務を果たしたことになります。

4.特別受益、寄与分の主張
2021年に民法が改正され被相続人(亡くなった人)から一部の相続人だけが生前贈与や遺贈、死因贈与で受け取った利益である特別受益や、相続財産の維持・増加への貢献度に応じて認められる相続分の増額分である寄与分については相続開始のときから10年を過ぎると主張できないことになっています(民法904条の三)。

遺産分割に期限はありませんが、これらの手続きに期限がある為、早めの分割手続きをおすすめします。

Q5. 遺産分割のやり直しはできるか
A5. 相続人全員の合意があれば遺産分割のやり直しは可能です。しかし注意すべきは税金です。再協議によって当初の協議とは別の人が不動産を取得すると、当初の相続人からの贈与とみなされ贈与税が発生します。その場合は不動産取得税も発生し、登記手続きに登録免許税も発生します。合意による分割協議の解除について安易に考えるのは禁物です。

Q6.遺言がある場合は遺産分割協議はできないか
A 6.相続人全員の合意があれば遺言があっても、遺産分割協議により遺言の内容と違う遺産分割をすることも可能です。しかし相続人以外の受遺者(相続人ではないが遺言により財産をもらった人。例:被相続人のお世話をしていた友人など)がいる場合は受遺者の同意も必要です。

まとめ
今回は遺産分割協議についてよくある質問をまとめてみました。遺産分割は誰しもが何度も体験することではない為、分からないことが大半だと思います。ご参考になれば幸いです。こちらにない質問についてもお気軽にお問合せくださいませ。
  


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