遺言の大切さは分かっているものの、公正証書遺言を作成すると、財産額や相続人の数にもよりますが公証人手数料だけで10万円以上の費用がかかります。また遺言書の作成にあたり、行政書士などの専門家に支払う報酬も加味すると合計で30万円程度になります。まだまだ自分の相続が先の話だったり、相続人の関係も良好だと、この金額を払って遺言書を作成するのはなかなかハードルが高いと思います。自筆証書遺言であれば費用も掛からずいつでも作成できますが、自筆証書遺言は書き方が民法において厳密に決められており、書き方を間違うとせっかく遺言を書いたのに無効になってしまうこともあります。また遺言は書いてから実際にその効力が発生する(書いた人が亡くなるとき)まで数十年後ということもあり、紛失のリスクがあります。そこで活用したいのが自筆証書遺言保管制度です。費用は3900円と公正証書遺言と比較してかなり安価であり、民法の形式に適合しているかどうかを法務局で判断し、遺言を法務局で保管してくれます。(※遺言が有効か無効化は判断しません)
私自身、法定相続人以外に財産を残したい人がいるた、この制度を利用して遺言を作成しました。今回はこの作成の流れについて私の実体験をもってお話しさせていただきます。
遺言書の作成
まずは遺言書を作成します。自筆証書遺言の様式は民法968条に記載してありますが、法務省による自筆証書遺言保管制度のサイトがあるのでそちらを参照すると分かりやすいと思います。用紙についても決まった用紙はないものの、用紙のサイズや余白について要件がいくつかあります。そちらのサイト内に遺言書の用紙例があるのでそちらを利用すると間違いないかと思います。私もそちらを利用しました。遺言書については当然自署で書かなければいけませんが、財産目録(財産の一覧表)についてはwordによる作成や、不動産であれば登記簿謄本の写し、預貯金であれば通帳の写しなどを添付することも可能であり、自署による記入は必須ではありません。
参照:自筆証書遺言保管制度「遺言書の様式についての注意事項」https://www.moj.go.jp/MINJI/03.html
参照:遺言書の用紙例https://www.moj.go.jp/MINJI/common_igonsyo/pdf/001321932.pdf
保管の申請の予約
遺言の保管申請をする法務局を決めて予約をします。保管をする法務局は以下のいずれかを管轄する法務局から選ぶことになります。
①遺言者の住所地
②遺言者の本籍地
③遺言者の所有する不動産の所在地
管轄区域内の法務局であればどこでも申請可能です。群馬県の場合は全ての地域が前橋地方法務局の管轄となり、本局(前橋)、高崎、桐生、伊勢崎、太田、沼田、富岡、中之条の8つの支局の中から選ぶことになります。私は事務所近くの高崎支局を予約しました。予約の状況を確認したところ各日1日4件(午前2件・午後2件)の合計4コマ(各90分)の中から選ぶこととなっています。高崎支局においては、最も近い日で1週間後だったので私はその日の午後2時半を予約しました。その後連絡先アドレス確認メールが届き、所定の事項を記入後予約完了メール、手続き案内メール、予約日の前日にリマインドのメールと合計4通のメールが届きました。
参照:法務局手続き案内予約サービスhttps://www.legal-ab.moj.go.jp/houmu.home-t/top/portal_initDisplay.action
保管申請書類の作成
保管の申請日を予約後、保管申請書類の作成に取り掛かります。様式については同じサイト内からダウンロードが可能です。記入については手書きの他、パソコン入力も可能ですがAdobe Acrobat Reader(無料版)のダウンロードが必要になります。遺言者(自分)の住所、氏名の他、受遺者(遺言により財産を受取る人)、遺言執行者(遺言の内容を成立させる人)の住所、氏名も記入します。私は1人の受遺者の住所を把握していなかったので改めて確認しました。遺言者の本籍を記載した住民票の写しが提出書類となっており、私は最寄りのローソンでマイナンバーカードを使い取得しました。ちなみに前橋市はコンビニでの住民票、印鑑証明の交付手数料は100円です(安い!)。自分の住民票は提出書類となっていますが、受遺者、遺言執行者の住民票は提出書類とはなっていません。
参照:遺言書の保管申請書https://www.moj.go.jp/MINJI/common_igonsyo/pdf/001321933.pdf
法務局へ
予約した日時に法務局に向かいます。高崎法務局は1階が謄本の取得や登記申請手続き、2階は供託や遺言の保管手続きとなっています。2階に上がり、予約した稲垣である旨を伝え、担当の方に遺言書、保管申請書類、本人確認書類(運転免許証)を確認して頂きます。不備はなかった様ですが、他の担当者にも確認してもらうので、その場で20分くらいお待ちくださいとのこと。その間にアンケートを渡され、この制度を何で知ったか、利用の目的などを記入。ほとんど話し声もなく、電話も鳴らないシーンとした室内でちょうど20分くらい経った頃名前を呼ばれ、不備はなかったとのことで一安心。1階で3900円分の収入印紙を購入して、2階に戻り申請書に貼付。そして、これから遺言書をスキャンして登録するので1時間くらいかかるとのこと。外出しても構わないとのことなので近くのカフェで時間を潰すことにしました。すると30分くらいで法務局より処理が完了したとの連絡あり、急いでコーヒーを飲み干し法務局に戻ります。そこで保管証を渡されます。また今後、自分に住所、氏名等の変更があった場合の手続き、遺言の撤回、変更について説明を受け終了となりました。
前橋地方法務局高崎支局https://houmukyoku.moj.go.jp/maebashi/table/shikyokutou/all/takasaki.html
まとめ
今回は自筆証書遺言保管制度を利用した自分の体験をお話しました。当日の帰宅後は早速家族に遺言書を保管したことを伝えました。まだまだ自分の相続は遠い先の事だと思いますが、遺言の内容を考えていると色々な思いが巡ってきました。今後も生活していく中で、状況や自分の心境の変化があれば書き換えていくこともあるでしょう。私の財産などたかが知れていますが、残された家族がトラブルなく相続できるように準備していきたいと思います。
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