稲垣一樹行政書士事務所

群馬県高崎市の行政書士・住宅ローン専門ファイナンシャルプランナー


遺言書作成のすすめ

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「遺言」の読み方ですが、「いごん」と「ゆいごん」どちらが正しいのでしょうか。ネット検索をすると大方の見解は以下の通りのようです。

ゆいごん・・・残された家族へのメッセージ全般のことであり、ビデオメッセージ等も含む。法律的な効力はない

いごん・・・民法に定義されている遺言のことであり、法律的な効力がある。

政府広報オンラインにて女優の貫地谷しほりさんがナレーションをされている、自筆証書遺言書補完制度に関する動画を拝見しましたが、「遺言書」というときは「ゆいごんしょ」と言い、「自筆証書遺言書保管制度」については「じひつしょうしょいごんしょほかんせいど」と言っています。また同じく政府広報オンラインの記事でアナウンサーの青木源太さんと女優の足立梨花さんの対談の中で、「漢字で「ゆいごんしょ」と書いて、法律では「いごんしょ」と呼ばれています。」と書かれていました。そう考えるとネットの見解は正しく、広義の意味での遺言を「ゆいごん」というのであり、法律的な遺言は「いごん」というのが一般的なのでしょう。一般の方からすると「ゆいごん」の方が馴染みがあるでしょうね。今回は遺言書についてお話をしていきます。

政府広報オンライン「知っておきたい遺言書のこと」https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202009/1.html

政府広報オンライン「預けて安心!法務局の自筆証書遺言書保管制度」https://www.gov-online.go.jp/article/202402/radio-1472.html

遺言の役割

遺言とは自分が死んだ後に、大事な遺産をどう処分するかを自分で決めておく制度です。遺産の分割には民法で定める法定相続分というものもありますが、家族や家業の実情を考慮して法定相続分とは違う割合で遺産を配分したい、または相続人ではない第三者に遺産を分けたいという希望もあります。この希望を叶える手段が遺言です。遺言がない場合は遺産分割の協議により相続人同士で話し合い配分を決めることになります。しかし、円満に協議が進むケースもある一方で、ときには財産の配分について争い、調停、裁判になるケースもあります。遺言は被相続人の意思を伝える手段であると同時に、こういった家族間の争いを防止する効果もあります。

遺言の必要性が高いケース

1.夫婦間に子供がいないケース
  子供がいない夫婦の片方が亡くなると、その父母(他界しているときは兄弟姉妹)が共同相続人となります。残った配偶者にすべての財産を相続させたいときは遺言が必要です。

2.親孝行の子に相続させたい
  法定相続分においては子供の相続割合は均等となっています。しかしながら、特にお世話をしてくれた子供や、生前他の子に比べて資金の援助をしてあげられなかった子供がいる場合はその子に多めに財産を残してあげたいと思うこともあります。この場合も遺言が必要です。

3.再婚をし、前の配偶者との間に子がいる。
  再婚をし、前の配偶者との間に子供がいる場合はその方が亡くなったときは、新しい配偶者の方と、新しい配偶者の方との間に子供がいればその子、そして前の配偶者の間の子供が相続人となります。新しい配偶者の方と、前の配偶者との子供は疎遠になっていることがほとんどであり、感情的にも分割協議が難航する可能性があります。そうならないように遺言書を残す必要があります。

4.特定の相続人に家業を承継させたい
  被相続人が会社で事業を営んでいて、その会社の株式の大部分を被相続人が持っている場合、特定の子供を後継者として指定しているときはその子に、会社の株式を集中させないと会社の経営権が分散してしまい、事業の運営に支障をきたす可能性があります。会社の経営者の方は事業承継と同時に、遺言書の作成は必須です。

5.内縁の夫婦の場合
  内縁の夫婦は、婚姻届けを出していない事実上の夫婦であり、互いに相続権がありません。相手に財産を残すには、相手に遺贈する旨の遺言をする必要があります。

遺言の形式

自筆証書遺言

自筆証書遺言は、遺言者が遺言書の全文と日付を自分で自書して署名、押印する方式です。以下にメリットとデメリットを簡単にまとめてみました。

メリット
・いつでも作成できる。費用がかからない。

デメリット
・方式の誤りや、内容の法律的な不備で無効になるおそれがある。
・遺言者の死亡後は相続人全員の立ち合いによる家庭裁判所の検認手続きが必要(保管制度を利用した場合は検認不要)
・自分で保管する場合は亡失や、発見者による改ざん、廃棄などのおそれがある。(保管制度を利用した場合は法務局にて保管)
 
やはり費用がかからないというのが一番のメリットでしょう。また現在は自筆証書遺言書保管制度もあり使いやすくなりました。しかしながら、自筆証書遺言書保管制度においては遺言の形式的な部分については確認してもらえるものの、内容については何も判断されることはありません。その結果、相続税が多くかかってしまったり、遺言の執行に無理がある内容になってしまうこともあります。

公正証書遺言

公正証書遺言は遺言者が公証人の面前で遺言の内容を話し、公証人が文書にまとめ、公正証書として作成します。以下にメリットとデメリットをまとめました。

メリット
・内容不備で無効になるおそれがない。
・裁判所の検認手続きが不要
・亡失や、改ざん、廃棄のおそれがない。
・字が書けない人、口がきけない人、耳がきこえない人も遺言ができる(通訳が必要)
・公証人が自宅や病院に出張して遺言ができる

デメリット
・費用がかかる
・証人が必要

財産や相続人の人数にもよりますが、数万から数十万単位の公証人手数料がかかります。しかし、公正証書遺言は長年裁判官や検察官として法律実務に携わってきた法律の専門家である公証人が、遺言者の真意を確かめた上で作成する遺言であり、やはり一番安全確実な遺言形式といえます。

遺言書の作成についてよくある質問

Q1.遺言書を作成した後、変更・撤回はできるか
A1.いつでも、何度でも自由に変更・撤回は可能です。変更・撤回は遺言で行う必要がありますが、その方式は先に作成した遺言の方式と同じである必要はありません。

Q2.遺言書を作成した後に財産を処分してもよいか
A2. 自由に処分、売却することが可能です。例えば遺言において長男に相続させると書いた不動産を生前に売却してしまった場合は、その不動産に限り遺言を撤回されたものとして、失効することになります。ただし、売却によって相続人間に不平等が発生し、せっかく争いを防ぐ為に遺言を書いたのに無駄になってしまうこともあります。財産の処分により、遺言書を書いた目的を達成できなくなる可能性があれば、変更や撤回をするのが良いでしょう。

まとめ

今回は遺言書作成についてお話させていただきました。ご相談者の方にも時々、既に遺言は書いてありますという方がいますが、本当に素晴らしいなと感じます。しかし、実際に見せてもらうと形式を満たしていない為、法律的な効力のない遺言であったりすることもあります。相続人間でそれで納得されればいいのですが、今では遺言書の形式や法的効力などはインターネットで調べればすぐに分かる時代であり、遺産分割後、後になって効力を争われるケースもあります。自筆証書遺言にしろ公正証書遺言にしろ、やはり専門家に相談した上で作成するのが一番確実だと思います。



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