稲垣一樹行政書士事務所

群馬県高崎市の行政書士・住宅ローン専門ファイナンシャルプランナー


不動産の取引価格と公示価格との差について(伊勢崎市編)

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不動産は一物四価と言われることがあります。これは1つの不動産に対して4つの価格があるという意味であり、下記の価格が挙げられます。

1.実勢価格・・・実際に売買される価格です。

2.公示価格(基準価格)・・・公示価格は国交省が、基準価格は都道府県が発表する、参考となる標準地(基準地)の1㎡の価格です。実勢価格の約9割と言われます。

3.路線価・・・国税庁が発表する土地が面している路線ごとに評価した1㎡あたりの価格です。相続税や贈与税の評価に使われます。実勢価格の約8割と言われます。

4.固定資産税評価額・・・市区町村により発表される固定資産税の計算に使われる価格です。実勢価格の約7割と言われます。

上記の様に実勢価格の他に公共機関により発表される3つの価格があり、それぞれが一般的に実勢価格の何割程度だと言われています。しかしながら、これは地域ごとに大きな乖離があります。例えば都内の都市部では実勢価格が公示価格の2倍になるということは珍しいことではありません。反対に地方になると実勢価格が公示価格より低くなることもあります。では群馬県において公的価格と実勢価格の差はどれほどなのでしょうか。これも市区町村により差があると思いますが、今回は国土交通省よりリリースされている不動産情報ライブラリを使用して、まずは伊勢崎市の中心市街地(伊勢崎駅周辺)・住宅地(安堀町)・郊外の農村地域(馬見塚町)の公示価格と実際に取引きされた価格がどれくらいの差があるのかを調べてみました。

中心市街地(伊勢崎駅周辺)

まずは伊勢崎駅周辺を調べてみました。伊勢崎駅周辺には公示価格の標準地が3つあります。39,200円~39,800円となっています。うち柳原町の2つが同価格39,800円/㎡となっています。

伊勢崎5−5
所在:伊勢崎市柳原町2−1
価格:39,800円/㎡(坪13.1万円)
地籍:132㎡
用途区分:商業地

伊勢崎-22
所在:伊勢崎市柳原町8-2
価格:39,800円/㎡(坪13.1万円)
地籍:185㎡
用途区分:住宅地

場所はここです。

用途区分は伊勢崎5-5が商業地、伊勢崎22が住宅地となりますが、同じ町内にあり距離的にも近しい2点です。
近隣は大型のスーパー、ホテル、ファミレスなどが立ち並びます。

不動産情報ライブラリより周辺地域の過去3年間における、取引記録をまとめると以下の通りとなりました。取引記録の選定にあたって、特別な事情があると思われる著しく金額が高い、または金額が低い取引は除いています。

柳原町の取引き事例は少ない為、周辺の地域の取引事例を含めてピックアップしました。

上記の金額から平均成約単価を算出すると4.8万円/㎡(15.6万円/坪)となります。
公示価格が3.9万円/㎡(13.1万円/坪)である点からすると、成約価格平均に対して公示価格は83.9%となります。一般的に公示価格は成約価格の90%程度となっていますので、この地域の成約価格は公示価格に対してやや高い相場で取引されていることがわかります。

住宅地(安堀町)

続いては住宅地です。安堀町は伊勢崎駅から徒歩20~30分程度で市街化区域の住宅街の他、調整区域内の田園地帯が混在する地域です。宮子町のショッピングモールなどにも近く、住宅用地の需要としては市街化、調整区域のどちらも需要が高くなっています。区画整理された地域については特に需要が高く、売却にでれば情報が表に出る前に買い手が見つかる地域です。

伊勢崎-2
所在:伊勢崎市安堀町字八反田252-9
価格:40,600円
地籍:215㎡
用途区分:住宅地

場所はここです。

商業施設も近く、70坪から80坪程度の住宅地が並ぶ、昭和に民間施工により区画整理された地域です。
周辺地域の過去3年間の取引事例は以下の通りです。

上記の金額から平均成約単価を算出すると4.4万円/㎡(14.5万円/坪)となります。
公示価格が4万円/㎡(13.2万円/坪)である点からすると、成約価格平均に対して公示価格は91.0%となります。一般的に公示価格は成約価格の90%程度となっていますので、この地域の成約価格は公示価格に対して一般的な水準で取引をされていると思われます。

郊外の農村地域(馬見塚町)

最後に郊外の農村地域です。馬見塚町は伊勢崎駅から徒歩60~90分程度でそのほとんどが調整区域となります。市街化区域、市街化調整区域のそれぞれに1点の標準地がありましたが、市街化調整区域の標準地を採用しました。

伊勢崎-4
所在:伊勢崎市馬見塚町字伊勢1038-3
価格:20,300円
地籍:330㎡
用途区分:住宅地

場所はここです。

田園地帯と住宅街の境目のような場所です。
周辺地域の過去3年間の取引き履歴は以下の通りです。

上記の金額から平均成約単価を算出すると1.6万円/㎡(5.2万円/坪)となります。
公示価格が2.0万円/㎡(6.7万円/坪)である点からすると、成約価格平均に対して公示価格は128.8%となります。一般的に公示価格は成約価格の90%程度となっていますので、この地域の成約価格は公示価格に対して割安な価格で取引されていることがわかります。

まとめ

今回は公示価格と実勢価格の違いについて調べてみました。予想通りですが、市街地ほど公示価格より実際の取引相場は高く、郊外においては公示価格より取引相場は低くなるという結果になりました。ただ今回は不動産情報ライブラリの取引価格情報をもとにして実勢価格を集計しましたが、不動産情報ライブラリにすべての不動産取引情報が反映されているわけではないことに留意する必要があります。また取引事例において、特別な事情が考えられる著しく金額が低い、または金額が高い事例は除きましたが、不動産取引においてはそのような事例が一定数あり、同じ地域においても取引の条件や、物件の個別の要因により大きく金額が変わる可能性があることを知っておくべきです。また郊外の農村地域の選定にあたり、伊勢崎市でもっとも公示価格の低い地点を選定するつもりでしたが、その様な地域はそもそも過去3年間の取引事例がありませんでした。そのような不動産の動きがない地域の場合も著しく低廉な金額で取引されることもあります。過去にベテランの不動産会社経営者の方から「相場なんてあってないようなものだよ」と言われたことがありますが、確かにそうなのかもなって思っています。今後高崎、前橋なども調べていきたいと思います。


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