日銀がマイナス金利の解除を発表しました。いつ解除するのかというのがずっと話題になっていましたが、この3月に解除するというのは少し意外に感じました。4月になれば中小企業も含めた賃上げの状況のデータも揃い、判断談材料が多く集まる為、解除しやすいのではないかと思っていました。しかし、3月に発表された春季労使交渉の回答は平均5.25%の賃上げ率と1991年以来、33年ぶりの高水準となり、中小企業の結果を待たず今回3月のマイナス金利解除となりました。
ここで一番気になるのが住宅ローンの金利でしょう。いまや住宅ローンを新規で利用する人の9割は変動金利を選択しており、自分が借りているローンの金利も上がるのではないかと心配になる方もいると思います。
変動金利型住宅ローンの基準金利は、各銀行が決める短期プライムレートという金利を基準に各行が決定していますが、2016年にマイナス金利が適用されたときに短期プライムレートは下がりませんでした。そうなると元々金利は下がっていないのに、マイナス金利が解除になったから変動金利は上げますよ!というのはおかしい話です。日銀としてもマイナス金利は解除するものの当面は緩和的な環境が続くとしており、今回のマイナス金利解除により今借りている住宅ローンの金利が上がるというのは考えにくいですね。実際に多くのメガバンクは金利を据え置いており、地銀や信金もそれに追随するでしょう。今回はあくまでも異次元の金融緩和が通常の金融緩和に変わったという感覚ではないでしょうか。
問題なのはこの利上げが継続的に続くかどうかというところでしょう。2022年のアメリカのように1年間で4%超も金利が上がるという環境になれば間違いなく住宅ローンの金利はぐっと上がりますが、まだまだ日本ではそれは難しいと思います。なぜなら物価上昇と賃上げ率を比較すると、依然として物価上昇率の方が高く、実質的な賃金はマイナスとなっているからです。実質賃金は今年1月の統計において22か月連続で前年を下回っている状況です。せっかくお給料が増えても、それ以上に物価が上がっているという状況では継続的に金利をあげていくのは難しいと思います。今回の春季労使交渉のように毎年5%の賃上げがされるようなことがあれば、やがて実質賃金も継続して上昇すると思いますが、今回の賃上げは物価上昇を原因とする、企業側としては「仕方なく賃金を上げた」ボーナス的なものであり、継続して5%の上昇を維持することは困難だと思われます。
市場では7月に追加利上げか?いや10月か?という声が上がっていますが、ここで追加利上げの可能性はあります。しかし過去の政策金利の利上げの動きを見ると1回の利上げは0.25%となるのが慣例であり、これ以上の利上げは想定しにくいところです。そもそも現在住宅ローンを利用する人の多くが変動金利型を選択している現状において、大幅な利上げを行えば世の中的にもパニックになりそうです。
また変動金利型住宅ローンを利用している方はご存じかも知れませんが、金利が上がったからすぐに返済額が上がるということではなく、金利の見直しは4月と10月の年2回、返済額は5年毎に見直しを行っている金融機関が多いです。なので仮に今年の10月に日銀が利上げしたとしても、その金利が4月の短期プライムレートに反映され、その短期プライムレートが返済額に反映されるのは3か月後となる為、早くても来年7月以降になります。
以上の点を考慮すると変動金利を利用している方も、現時点では心配はないかなと思います。全期間固定金利型に借換するかという意見もありますが、現状の全期間固定金利(フラット35・35年全期間固定1.84%※R3.3.24現在)と現在の変動金利(0.3~0.5%)はあまりにも幅があり、正直かなりもったいないです。
結論として現在変動金利型住宅ローンを利用している方はそのままでいいと思います。
しかしこれからはインフレの時代になっていくのかなという感じはしますね。現金の価値は下がり、物の金額が上がっていく時代においては賃貸よりも持ち家が正解なのかも知れません。
以上今回はマイナス金利解除についてお話させていただきました。
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